個人開発を続けていると、ある瞬間ふと気づきます。「あれ、これ誰にも言ってないな」と。
設計の判断、調査の結論、書いたコードの良し悪し — 全部ひとりで決めて、誰のレビューも受けずに次の週末を迎えています。会社員のときには Slack に貼れば誰かが返してくれた話が、個人開発では全部、自分の中で完結してしまいます。
私は週14時間の副業で個人開発をしているのですが、続けるために編み出した対策が、LLMとの壁打ちを習慣化すること でした。
本記事では、なぜそれが個人開発者にとって贅沢品ではなく 「インフラ」 なのかを、4つの観点で書きます。
自己紹介
私 mura は、副業で個人開発をしているエンジニアです。屋号は SideCraft —「副業(Side)」で「職人的に作り続ける(Craft)」、という意味で名付けました。
ロゴのモチーフは 鉋(かんな) です。削って整える、磨き込みのイメージを込めています。書いた文章も、組んだ設計も、リリース前にもう一削り入れる感覚を大事にしたい、という気持ちが由来です。
稼働は週14時間ほどで、平日の夜と週末を中心に、現在2つの制作物を並行で進めています。
- eBook「壁打ちエンジニアリング — 個人開発者のためのLLM活用プロンプト100」(W5予定 / 先行価格 ¥980)
- Prompt Memory — マルチLLM履歴検索 Chrome 拡張(W12予定)
このブログでは、90日で個人開発の収益化を目指すリアルタイムの記録を残していきます。週末の作業から抽出した知見は、毎週日曜にニュースレター SideCraft Notes でもお届けしています。
なぜ個人開発者こそ壁打ちが必要か
観点① 集合知の代替 — チームレビューの代わりに
会社員のときの設計レビューを思い出してみます。Slack に設計メモを貼ると、誰かが「ここ、ロックの順序が逆では?」と返してくれる。これは設計の質を黙って底上げしている、見えないインフラだったと、辞めてから気づきました。
個人開発にはこのインフラがありません。誰も指摘してくれないし、自分のロジックの抜けは自分では見えにくいものです。
代わりに使えるのが LLM です。設計メモをそのまま貼って、「この設計の弱点を3つ挙げてください」と頼むだけで、レビュー会議の縮小版ができあがります。
完璧な指摘は返ってこないこともあります。それでも、自分一人では気づかなかった視点が1つでも混ざっていれば、十分に元は取れます。私は週末の設計メモを書いた直後に、必ずこの一手を入れるようにしています。返答の半分は的外れでも構いません。残り半分の中に「これは見落としていた」が1つあれば、設計の質が一段上がります。
観点② 時間制約への即応 — 待ち時間ゼロが正義
副業の稼働時間は、たいてい平日夜と週末です。私の場合は週14時間ほど。
この限られた時間の中で、人間のレビュアーを「明日まで待つ」「来週のミーティングで聞く」という選択肢は、現実的ではありません。1日待った時点で、その週末は半分終わっています。
LLM の最大の強みは、品質ではなく 速度 だと思います。
「いま手が止まっている」「次の判断材料が欲しい」というその瞬間に、3秒後に何かが返ってくる。質はその後で吟味すれば良くて、まず 手を動かし続ける状態を維持できる ことが、副業エンジニアの継続を支えます。完璧な答えを待つより、雑でも次の一手が打てることのほうが、限られた時間では遥かに価値が高いと感じます。
観点③ 判断材料の偏りの補正 — 一人の経験はどうしても偏る
人は自分が経験したことしか深く知りません。
私はバックエンドが長いので、フロントエンドの判断には自信が持てない領域がたくさんあります。決済、メール配信、画像最適化、SEO — どれも「やったことはあるけど深くない」という曖昧な状態のまま、判断を迫られる場面が個人開発では頻発します。
LLM の知識は 中央値 だと考えています。最先端ではないかもしれませんが、ある程度教科書的に整理された知識を、その場で借りることができます。
経験の浅い領域でも下駄を履ける。これは個人開発者にとって、隠れた大きな効用だと思っています。判断のたびに調べ直していたら時間が足りませんが、LLM に「業界標準としてはどうですか」「主要な選択肢は何ですか」と聞いてしまえば、判断の足場が30秒で揃います。
観点④ 継続モチベの維持 — 孤独による失速を防ぐ
個人開発で挫折する最大の理由は、技術的な壁ではなく 孤独 だと、私は思っています。
誰にも進捗を報告しない週が続くと、「これ続けて意味あるんだっけ」という問いがじわじわ顔を出します。LLM はその問いに答えてくれる存在ではありませんが、毎日対話する相手がいる という感覚は、思ったより継続を支えます。
「昨日の続きから話を聞いてくれる相手」が、副業の作業環境の中に常駐している。
この感覚は、賛同や励ましとは違う種類の伴走です。一人作業の精神的な摩擦を、確実に下げてくれます。LLM は私を励まそうとしませんが、続けるための摩擦を下げてくれる、というのが半年使った今の実感です。
4つが揃ったとき、壁打ちはインフラになる
個人開発者にとっての壁打ちは、贅沢品ではなく インフラ です。集合知の代替、時間制約への即応、判断材料の偏り補正、継続モチベの維持 — この4つが揃ったとき、副業の限られた時間で「続けられる」状態に近づきます。
このブログでやること
SideCraft では、90日で個人開発の収益化を目指すリアルタイムの記録を、毎週日曜にニュースレター SideCraft Notes でお届けしています。本ブログ本体には、その週に学んだことや実装の試行錯誤を、なるべく 失敗・遠回り・中断もそのまま 残していくつもりです。
成功談だけを並べた記事はインターネット上に十分あって、副業で個人開発を続けたい人が本当に欲しいのは、たぶん「続いている人の生の手触り」のほうだ、と私は思っています。
同じ立場の個人開発者・副業エンジニアの方の判断材料になるように、書ける範囲で具体に踏み込んで残していきますので、よければ次の日曜にもまた寄ってください。
次回 SideCraft Notes #1 と eBook 予告
本記事の続きとして、SideCraft Notes #1 では、ここで触れた「壁打ち」を実際に使えるレベルまで具体化した、5軸チェックリストの土台「前提共有」 をお届けします。今夜の作業前に1回試せるテンプレ付きで、返答の手触りが変わる実感を持ち帰ってもらえる内容にしています。
加えて、eBook 「壁打ちエンジニアリング — 個人開発者のためのLLM活用プロンプト100」 の第1章を、近日中に 無料サンプル として公開予定です。第1章には、本記事で扱った4観点の発展形 + 5軸の全貌 + 即使えるプロンプト10個(P-01〜P-10)が入っています。
先行販売は 2026-05-18 週から ¥980(通常 ¥1,980)で開始予定です。